第四回 日本伝統医学から健康を考える(4)

「うがい大作戦」

 前回までの3回は人体と氣についてお話をしてまいりましたが、そろそろ飽きてこられた方も多いかと思います。そこで今回は実戦的で簡単な健康法をご紹介したいと思います。「うがい」です。ガラガラとやるあのうがいです。これで風邪の予防から、喘息、アトピー、慢性的な痛み等々をなんとかしようというお話をいたします。方法は二通りです。

「体質改善のお茶うがい、かぜにはお酢うがい」

1 濃いお茶をいれて、 0.5 〜 1 %の食塩を入れたもので,一日なんどもうがいをすることです。お茶はなんでもよく、番茶、安いウーロン茶などなんでもかまいません。リプトンのティーバックなどは簡単に濃いお茶を出すことができて便利です。朝などに適量を作ってペットボトルなどにいれておいて、毎日なんどもこれでうがいをします。 ( 少なくとも一日3〜5回)

2 お酢でうがいをする。米酢、すし酢、りんご酢などをうすめずに使います。お茶よりはるかに刺激が強いので,一日朝夕2回くらいでよいです。

「うがいで免疫があがる」

 どちらも喉、特に扁桃腺を消毒し、鍛える目的で行います。扁桃腺を鍛えると免疫があがります。特にお茶によるうがいを一日5回以上毎日毎日行うと,からだが変ってきます。まず元気になり風邪をひかなくなります。アレルギー疾患に奏効するので喘息やアトピーが軽くなります。膝や腰などの慢性的な痛みが消えて行きます。たかがお茶によるうがいで虫が好すぎると思えるでしょうが、とにかくやってみてください。しかしこれは薬ではありませんから、3ヶ月から半年は続けることです。大変に忍耐のいることですが、体質が変わりますので、再発することもなくなりますし、健康な体を手にいれることができます。

さて、説明にはいりましょう。扁桃腺あるいはその周囲の喉の粘膜を鍛えるということが、なぜこのような効果をもたらすのでしょうか。喉は体内と外気との接点で、常にバクテリアやアレルゲンとなる物質にさらされています。扁桃腺を中心とするのどの粘膜では、常に白血球などがそれらの物質を処理すべく戦っていて、その結果バクテリアや白血球自体の屍骸が粘膜の炎症を助長します。この死んだ細胞が胃腸や血管、リンパの流れに乗って体中のリンパ節や関節や体力が落ちていて体液の流れの悪い部分で留め置かれます。これが一定の期間をおいてアレルゲンとなり、すぐ取れるはずの痛みがいつまでもとれなくなったり、喘息やアトピーを助長する事になります。うがいをするとこのお茶に含まれるタンニン酸や塩が喉の粘膜の炎症を防ぎ、なんどもうがいすることによって、アレルゲンとなりうる物質が体内に取り込まれる量が減るのです。「いや、私は扁桃腺を切除していますから!」とおっしゃる方も多いのですが、実は扁桃腺は喉の上下左右に 4 種類あり、このうちのどれかは残っているのですし、喉の粘膜を鍛え常に清潔にしていることでも同様の効果が期待できます。東洋医学的に考えると、「腺」は扁桃腺もリンパ腺も腎上腺(天然の副腎皮質ホルモンをだすところ)も含めて,足の少陰腎経という経絡に属しています。うがいで扁桃腺を中心に鍛えることにより、この足の少陰腎経に影響を及ぼし、免疫を高める作用があると解釈できます。

「お酢のうがいはかぜを吹き飛ばす」

 次にお酢によるうがいです。これは風邪のごくひき始めに著効いたします。漢方医学のなかで最も重要な古典である「傷寒論」という書物のなかに、「苦酒湯」という薬方があります。これは苦酒、半夏、卵白でできた薬方です。原典には「主として邪毒の結聚を去り、氣を通じ、諸般の苦痛を治するの能を有する」とあり、この「苦酒」とは「お酢」のことです。このお酢で直接うがいをします。一口分を口に含んでガラガラと喉を洗うようにします。とても刺激が強いので、むせないように注意してください。特に風邪の初期で「あ、なにかへんだな」という時にこれを行うと、スパッと風邪を頓挫させることができます。タイミングが大事なので、いつも自分のからだを観察する癖をつけておきましょう。

 とにかく今から始めてみてください。そして続けてみてください。

これまで述べた効果は私自身と、患者さんたちで実証済みです。必ず効果がありますよ。

    

第一回 日本伝統医学から健康を考える(1)

第二回 日本伝統医学から健康を考える(2)

第三回 日本伝統医学から健康を考える(3)